「ねぇ、壱。」
「なに?」


”あの人は誰なの?”
その言葉が口からでそうになる。

「今どんな話書いてるの?」
「ん〜、秘密。」
「いつもそればっかりじゃん。」

右手で壱を叩こうとする。
その手を掴まれた。

「明日香、今日やっぱ変。」

いつも私が”変”なことには気がつくのに、その理由に気付かない。

鈍感。



「そう?」

わざと明るい声で言う。
手を離してもらおうとしたら、壱の手の力は強くなった。

「明日香。」

名前を呼ばれただけのなに、その先の言葉を促すような声。
いつもそれに負ける私。

だけど、今日は違った。