「本当だな。」


重い腰を上げて、俺と斎
藤、神田、石丸、幸並が
緊急工事のメンバーに編
成された。


なかなかややこしい事に
なってるとか、なってな
いとかで、仕事ができる
面子で揃えてきた。


現場に着いて、準備して
周りの家へ一軒一軒挨拶
してまわる。


今思ったら、この時から
運命は動いてた。


「この家の娘さん、綺麗
な子だったぞ」


ガードマンの羽田じぃが
神田に耳打ちしていた。


「ですって、田邊さん。」

「やかましい、はよ仕事
しろ。仕事。」


俺たちは常にこんな感じ
で、毎日フランクに、ば
しッッと!!働いていた。


作業は難航、どこから手
をつけたらいいのか…


悩みに悩んでいた時、ふ
と顔を上げた。


前の家の玄関に女が立っ
てた。


目を見張るくらい綺麗な
女が。


子連れだったけど。


長い黒髪に、意思の強そ
うな目


白い肌は向こうが透けそ
うだった…


「田邊さん、何見てんす
か」


石丸にせっつかれて、現
実に戻る。


「いや」


ガードマン越しに、白い
車が走って行くのが見え
た。