ガチャ
目の前にはキレイに磨かれた、長い廊下がのびている。
リビングのほうから笑い声と、お菓子のいい匂いがただよってくる。
パタパタ..
なるべく気付かれないように行きたい。
みんなの気分を悪くしたくない。
カーペットのしかれた階段をのぼろうとした時―
「あら、帰ってきたの。」
振り返ると義理母が、不満げそうな顔で立っていた。
「…。」
ただ見つめることしかできないあたし。
「別に帰ってこなくてもよかったのにね。」
無視して階段をのぼろうとした時、
「その顔、あの女にそっくり…。あんたも人の男あさくりまわしてんじゃないでしょうね?」
義理母はハッと笑った。
「っ…。」
口から出そうな言葉を飲み込んだ。
ぎゅっと拳を握って、階段を駆け上がった。