「あ、でも……」

瑞希は、不意に何かを思い出したように言葉を発した。

「何?」

「池上君の彼女さんに悪いのではありませんか?」

「彼女? そんなのいないよ」

「うそ?」

「うそじゃないよ。何で?」

「だって、池上君は……」

「俺が、何?」

「それは……」

「ん?」

「とっても、素敵なのに……」


瑞希は顔を真っ赤にして俯いた。


(瑞希は今、俺の事“素敵”って言ったよな? 何だろう、ヤバイくらい嬉しいんだけど!?)


達也は今までにも“素敵”とか“カッコイイ”とか、そういう言葉を女性から数え切れないほど言われて来た。

なのに、こんなに嬉しいと思ったのは、今回が初めてだった。