「うん。小さくて、大人しいから、いるんだかいないんだか分からないぐらいだよ。
顔はよく見ればお人形さんみたいで可愛いんだけど、いつも俯いてて髪で隠れてるから、それに気付いてる人は少ないんじゃないかな」

「ふーん」

(しかしおまえは気付いてるって、自慢したいわけだろ?)

そんな嫌味を言いたい気持ちを達也は抑えた。

「すっごい無口でさ、授業中以外に彼女の話し声って、まず聞かないんじゃないかな」

(俺は聞いたぞ。“ごめんなさい”ばかりだけどな。か細くて、儚げな声だったなあ)


「じゃあ、友達もいないって事か?」

「うん。少なくても2年の時はいなかったと思うよ」

「へえー、何が楽しいんだろうか」

「さあね……、勉強じゃない?」


(勉強か……
確かに、重たい英語の辞書とかを抱えてたもんなあ。今も図書室で一人黙々と勉強してんだろうな……)