「中山さんは、体育館の裏で倒れていました。頭から水を被り、意識は朦朧としていました」

辺りから“えーっ”とか、“可哀相…”といった声が上がった。

「大丈夫なのかね?」

教師の問い掛けに、達也は前を向いたまま「分かりません」と答えた。

本当は、瑞希は頭は打っていないようだと春田から聞いて、少しホッとしているのだが、達也はわざとそれを言わなかった。


「状況から判断して、中山さんは集団からリンチを受けたんだと思います」

教室中がシーンと静まり返った。

「この中に犯人がいるなら、名乗り出てほしい。あるいは犯人を見た人がいたら、それを教えてほしい」

達也の呼び掛けに、みんな黙り込んだままだった。下を向いたり、横目でキョロキョロしたり…

瑞希を廊下に連れ出した女子も、下を向いて恐怖におののいていた。