「先生、ちょっとそこを使わせてもらっていいですか?」

達也は教壇を指差した。

「ここをかね?」

「はい」

「ん……分かった」

達也の真剣さに負けた、という感じで教師は教壇から離れた。元々、温厚な老教師ではあるのだが。

「すみません」と教師に頭を下げ、達也は教壇の前に立つと、厳しい顔で正面を向いた。

クラスのみんなは、固唾を飲んで達也に注目している。


「クラスメートの中山瑞希さんは、今、保健室で治療を受けています」

達也がそう切り出すと、みんなからどよめきが起きた。

「池上君、どういう事かね?」

教師がすかさず聞いてきたが、それには“ちょっと待ってください”という感じで手を挙げ、正面に向き直って達也は話を続けた。