「中山さん、聞こえる? 返事は出来る?」

春田が瑞希の耳元でそう聞くと、瑞希は目をつぶったまま、小さくコクコクと頷いた。

「意識はちゃんとあるわね…。
中山さん、目を開けると目眩がするの?」

瑞希は再び頷いた。

「どうなんですか、先生?」

「たぶん貧血ね。とにかく濡れた服を脱がして、体を温めてあげないと…。着替えはあるかしら?」

そう言いながら、既に春田は瑞希の上着を脱がしに掛かっていた。

「あ、えっと…」

達也は瑞希から顔を背けながら、瑞希の着替えについて考えた。

「あ、体操着だ。今日は体育の授業があったから、体操着があるはずです」

「中山さん、体操着はロッカーの中かしら?」

瑞希が頷くのを横目で確認すると、「持って来ます!」と言って達也は保健室を飛び出した。