瑞希を抱いたまま、達也は保健室のドアを体で押して開けた。

「ちょっと、ノックぐらい……あら、どうしたの、池上君!」

「先生、この子を診てください」

校医の春田は、立ち上がるとすぐに二人に近寄り、達也が抱きかかえる女子の顔を覗き込んだ。

「中山さんじゃないの! どうしたのよ? びしょ濡れじゃないの…」

「俺も詳しくは分からないんですけど、意識が朦朧としてるんです。頭を打ったんじゃないかと……」

「じゃあ、取り敢えずそこのソファーに寝かせてちょうだい」

「はい」


達也が瑞希をそっとソファーに寝かせると、春田は瑞希の頭に打撲傷がないか調べた。

「どうですか?」

「頭を打った形跡はないわね」

それを聞いて達也は少しホッとした。