教室に戻った達也は、瑞希の席に目をやったが、彼女の姿はなかった。

(まだ図書室かな?)

瑞希が昼休みは図書室で勉強するのを日課にしている事を、達也は知っていた。しかし…

(何で弁当を出したまんまなんだよ…)

瑞希の席に近付いてみると、机の上にピンクの弁当箱が出ていた。そしてその上には、箸が揃えて置いてある。

弁当箱を持ち上げてみると、手にいくらか重さを感じた。つまり、空ではないという事だ。

達也は嫌な予感がし、教室を飛び出すと階段を2段飛ばしで駆け上がり、図書室へと向かった。

達也は想像した。
瑞希が教室で弁当を食べている時、何かが起きて瑞希は食べるのを中断した、と。その“何か”とは…


図書室の戸を勢いよく開くと、カウンターの図書委員の女子から、驚いた顔で見られた。
それには構わず、達也は急いで図書室の中を見渡したが、やはり瑞希の姿はそこになかった。