そう言ったのは、達也と並んで歩いていた田代圭介だった。

圭介は、3年になって達也と同じクラスになった男子で、二人は席が前と後ろという事もあり、あっという間に親しくなっていた。と言っても、圭介の方から達也に近付く格好だが。

今も教室で昼食を一緒に食べ、達也が図書室に借りた本を返しに行くと言うので、圭介がそれに付き合ったところだった。

二人は栗色に染めたボサボサの髪と、背格好がよく似ていた。
ただし顔付きは、達也が整い過ぎと言える程の美形で、目つきは鋭く、安易には近付き難いオーラを放っているのとは対照的に、圭介は人懐こそうで、少し子供っぽさがあった。


「おまえ、あの子を知ってるのか?」

「うん。2年の時も同じクラスだったから」

「ふーん……」

少女が図書室に入って行くのを見届けると、二人は教室に向かって歩き出したが、すぐに達也は足を止めた。

「おい、圭介。おまえ今、2年の時“も”って言ったか?」