「そういう話なら、俺は消えるよ」

圭介は達也と祐子がかつて付き合っていた事を知っていた。
だから瑞希の事でそれを蒸し返すような話なら、自分はこの場にいない方がよいだろうと思い、階段を下りかけたのだが、

「待って。そうじゃないの」

祐子に呼び止められてしまった。

「今更こんな奴と、よりを戻そうとかって話じゃないの」

「え?」

圭介は祐子の言葉に驚いて足を止めた。


(“こんな奴”って、達也君の事?)


女子からモテモテの達也が、その女子から“こんな奴”なんて言われ方をした事に、圭介は驚いたのだ。


(達也君は、この子に何かしたのかな…)


と圭介は思ったが、そういう事ではなく、むしろその逆だった事を次の祐子の呟きで知った。

「こんな煮え切らない、草食男なんか、大嫌い…」