「俺の家は隣の市なんだ。だから電車に乗るのは１駅だけ。中山さんは？」

「わ、私は電車には乗りません」

瑞希は、下を向きたい気持ちを懸命に我慢していた。そして、この話題が早く終わってほしいと祈っていた。

「へえー。中山さんは駅の近くに住んでるんだあ。羨ましいなあ。俺の家も駅から近いんだけどさ、隣の市だからな…。この市にしておけばよかったよ」

瑞希は達也の言い方に『え？』と思った。まるで、自分で家を建てたみたいに聞こえたから。

でも、この話題が早く終わってほしかったので、その疑問は口には出さなかった。


二人は瑞希の歩く速さに合わせていたので、かなりゆっくり歩いていた。
そのため、後ろから来た男子生徒に追い付かれてしまった。

「よお、達也。そちらは新しい彼女かな？」