「さっそく約束を破ったね? いけない子には、罰を与えないとな」

達也がそう言った途端、瑞希は立ち止まってしまった。
そして達也を見つめる目には、はっきりと恐怖に怯える色が浮かんでいた。

(しまった……)

達也は、校医の春田から言われた言葉を思い出していた。

『あの子が怯えたりしないように、気をつけてあげて?』

そう言われたのに、瑞希を怖がらせてしまった。

「あ、罰と言っても大した事ないんだよ。そうだなあ……、デコピンとか?」

達也は努めて陽気に、微笑みを浮かべながら言うと、瑞希のオデコに手を伸ばした。

「じっとして? 手加減するからさ」

瑞希は肩をすくめ、恐怖に体を固くしていた。
達也は、そんな瑞希の小さなオデコに向け、ほんの軽く指を弾いた。

「痛かった?」

笑みを浮かべたまま瑞希の顔を覗き込むと、瑞希は唖然としながら、「少しだけ」と答えた。