「ああ、それと、下を向くのはなしね?」

「え?」

思わず瑞希が顔を上げると、自分を見下ろす達也の視線とぶつかった。

「中山さんはいつも下を向いてるけど、少なくても俺といる時は上を向こうよ。ね?」

「あ、はい。ごめんなさい」

済まなそうに頭を下げる瑞希を見て、(また、“ごめんなさい”かよ……)と、達也は心の中で呟いた。

「それから、“ごめんなさい”は禁句!」

「え?」

「中山さんは謝ってばかりだからさあ、もう聞きたくないんだよね、“ごめんなさい”は……」

「ごめんなさい」

「ん?」

「あっ」

瑞希は、“しまった”という感じで手で口を被った。

その手が子供の手のように小さくて、可愛いなあと達也は思った。