(重いなあ、この鞄。こんな重いの、よく毎日持って歩けるよなあ。小さい体で……)

瑞希の鞄には教科書や参考書、それと辞書などがびっしり詰め込まれている。

手ぶらで歩く事に慣れていない瑞希は、所在なく達也の後ろを俯き気味にトボトボと歩いていた。

「中山さん……」

「はい?」

不意に名前を呼ばれた瑞希は、達也の顔を見上げた。

クラスで一番背が高い達也と、一番小さな瑞希の身長差は軽く30センチはあるだろう。
自然と上目遣いになる瑞希の黒目がちな目に、達也はまたしても胸のざわつきを覚えた。

「俺の横を歩いてくれない? 話しにくいからさ……」

「あ、はい。ごめんなさい」

瑞希は、勇気を出して達也の左に並んだ。そして達也がゆっくり歩きだすと、瑞希も俯きながら歩きだした。