（うわっ。何でそんな目で俺を見るんだよ？ 俺、変な事言ったか？）

達也は瑞希の少し潤んだような瞳に見つめられ、胸の動悸が激しさを増し、息苦しささえ覚えていた。

「か、帰ろうよ？」


（チッ。また噛んじまった。どうしちゃったんだよ、俺？）


「あ、あの……、私とい、池上君が帰るんですか？」

「そ、そうだけど？」


また噛んでしまって心で舌打ちした達也だったが、瑞希は依然として達也を見上げたまま動かなかった。

「嫌ならいいけど……」

瑞希が嫌がっているのかと思い、達也はそう言ったのだが、

「か、帰ります！」

と言って、瑞希はいきなり立ち上がった。

そして、「ちょっと待ってください」と言い、慌てた様子で鞄の蓋をカチャカチャ閉めたりした。

そんな瑞希がなんだか可哀相に思え、「慌てなくていいよ」と、達也は優しい声で言った。