「ぎゃ、虐待!?」

「君、瑞希ちゃんから聞いてないの?」

春田は目を丸くして達也を見た。

「先生、前、前!」

「あ、そうね」

「虐待って、瑞希が受けてたんですか!?」

「そうよ。義父から酷い虐待を受けてて、近所の人が警察に通報して危ない所を保護されたのよ」

「危ないって…?」

「あのまま続いたら、瑞希ちゃんは殺されてたかもしれないって事よ」

「殺される…」

人の命までも奪う暴力がどれ程のものか、達也には想像出来なかった。

そしてそれが、華奢な少女である瑞希に向けられたと思うと、猛烈な怒りが込み上げて来た。

「どうして瑞希ちゃんは、そんな家に戻ったのかしら…」

「もしかすると…」

「え?」

「俺の想像ですが、瑞希は母親を信じてみたかったのかも…」