達也が鞄を肩に下げ、職員専用の駐車場で一際目立つ春田の真っ赤な小型車の前で待っていると、水色のブラウスにタイトなミニスカートを履いた春田が、ハイヒールでカツカツと音をさせながら走って来た。

そして手に持ったキーを車に向けると、カチャッとドアのロックが解除された音がした。

「早く乗って!」

「あ、はい」

達也は鞄を後部座席に乗せて素早く助手席に座り、春田は運転席に乗り込み、焦った様子でカチャカチャとシートベルトをした。

「母親は風邪だと言ってるそうね?」

「はい…」

達也がシートベルトを嵌めると同時に、車は勢いよく走り出した。

「それが本当ならいいんだけど…」

春田の呟きに、達也は驚いた顔で春田を見た。

「え? どういう事ですか?」

「またアレが始まったら大変って事よ」

「“アレ”って、何ですか?」

「虐待に決まってるでしょ!」