翌週になっても、瑞希は元気がなかった。と言うより、更に元気がなくなり、落ち込んでいるように達也には見えた。

瑞希の義父は、やはり以前と何も変わらず、仕事もせずに昼間から酒を飲んでいた。
そして母親も、変わっていなかった。

施設での二人は演技だったのだ。瑞希を家に戻すための。
瑞希を家に戻そうとしたのは、もちろん愛情からではない。瑞希のアルバイト収入が目当てだった。

しかも、瑞希が必死に貯めて来た貯金は、あっさりと奪われてしまった。


学校からの帰り道。

「なあ。まだバイトを辞めないのか?」

「か、代わりの人が見つからなくて…」

「そうか…。あ、今日進路相談あったよな? 瑞希はどこの大学を受けるんだ? 俺、今から頑張って瑞希と同じ大学を受けようかと思うんだ」