「廊下の角で俺とぶつかって、ころんだ時に手を床に着いたんだと思います」

春田は瑞希に聞いたのだが、答えたのは達也だった。

春田は達也にチラッと目をやり、「そうなの?」と瑞希に聞くと、瑞希は小さな声で「はい」と頷いた。

「こっちの手ね? ちょっと見せてね?」

春田は瑞希の手を取り、軽く押したり曲げたりをした。

「あっ…」

「痛かったわね? ごめんなさい」


「先生、どうなんですか?」

「手首の軽い捻挫だと思うわ。湿布とテーピングで様子を見ましょう?」

春田は湿布薬を瑞希の手首に当て、その上から伸縮性の包帯をグルグルと巻いた。

「骨に異常はなさそうだけど、もし明日になっても痛みが続くようなら、病院でレントゲンを撮ってもらって?」

「分かりました」