(え? 誰?)

それが達也だと気付くのに、数秒掛かった瑞希だった。

昨日の出来事を思い出すと、瑞希はまだ夢を見ているんじゃないかと思った。

でも、目の前で静かに寝息を立てているのは紛れもなく達也であり、その温もりは夢じゃなかった事の確かな証。

達也を起こさないようにそっと肘を付き、達也の寝顔をまじまじと見る。

(なんて綺麗な顔なんだろう。それに、可愛い…)

起きてる時の達也は、目が鋭い事もあって凛とした印象が強いが、その目を閉じた寝顔は羨ましい程に美しく、それでいてあどけない美少年といった感じだ。

薄く開いた唇は柔らかそうで、綺麗な桜色をしている。
昨夜はこの唇と自分のそれが何度も触れ合ったと思うと恥ずかしく、その時の感触を思い出すと胸がドキドキした。

瑞希は、心臓が口から飛び出すんじゃないかと思える程ドキドキしながら、ゆっくりと達也の唇に、自分の唇を重ねていった。