瑞希は恐る恐るという感じで保健室に入って来た。

「診てほしいのはこの子です」

「あら、見慣れない子ね。どうしたの?」

「右手を怪我してると思うんです」

「そうなの? じゃあ、そこに座って?」

モジモジしてすぐに動こうとしない瑞希に、「ほら、座って?」と達也は言い、そっと瑞希の背中を押した。

瑞希はピクッと体を震わせ、か細く「はい」と言って丸椅子に静かに腰を降ろした。

春田は、そんな様子を目を細めて見ながら、瑞希の前にひじ掛けの付いた椅子を移動してそれに座った。

「あ、池上君も座って?」

「いえ、俺はいいです」

「そう? じゃあ、どんな状況で手を怪我したのか教えて?」