「朔太郎か…、なるほどなあ。詩を読むなら、ハイネとかボードレールにすればよかったのに…」

「そうなの?」

「俺だって、朔太郎や太宰とか読むと落ち込むよ。ま、そこが好きでもあるんだけどな」

「じゃあ他の詩集、読んでもいい?」

「いいけど、その前に風呂入れよ」

達也は瑞希から本を取り上げ、本棚に戻しながら言った。

「お風呂? 達也は?」

「俺は後で入る」

「え? 私は後でいいで…じゃなかった、いいよ」

「おまえはお客さんなんだから先に入れ」

「いいえ。達也が先」

「おまえが先!」

「私は後!」

「おまえも頑固だなあ…どうすっか…」

達也は、ソファーにチョコンと座り、真っ直ぐ自分を見詰める瑞希を見下ろしながら腕を組んだ。

「じゃあ……一緒に入るか?」

「………!」

「なんて…」

「いいわよ」