瑞希はどれもまともに読んだ事はないが、以前に国語の教科書で萩原朔太郎の詩を読み、その退廃的で独特な詩が印象に残った記憶があったので、それを本棚から引き抜いてソファーに座った。

ハードカバーの表紙をめくって行くと、古い文体のため、初めはすんなりとは入って行かなかったが、徐々にそれにも慣れ、やがて詩人の世界へと入り込んで行った。

そして詩と自分とがシンクロし、知らず知らずに瑞希は涙をこぼしていた。



「どうしたんだ?」

そう声を掛けられるまで、達也が戻った事に瑞希は気付かなかった。

「本読んで泣いたのか?」

瑞希は目を擦りながらコクンと頷いた。

「何を読んでるんだ…?」

そう言いながら、達也は瑞希が膝の上に乗せている詩集を指で摘み、表紙を覗いた。