すっかり日は落ち、もうすぐ五月だというのに、肌寒さを通りこして寒いと言ってもよい夜だった。
達也は、イタリア料理店を出てすぐに繋いだ瑞希の小さく華奢な手を、少しだけ強く握った。
「なあ、瑞希…」
「はい?」
瑞希が自分を向き、見上げているのが分かったが、達也は前を見たまま話を続けた。
「本当に美味かったのか?」
「はい、美味しかったです」
「じゃあ、食べてる時、嬉しかったか?」
「はい、嬉しかったです」
「本当に?」
「本当ですよ。どうしたんですか?」
「瑞希…」
達也は不意に立ち止まり、真剣な目で瑞希を見た。
「だったら、なぜ…」
“笑わないんだ?”と続く言葉を、達也は飲み込んだ。
達也は、イタリア料理店を出てすぐに繋いだ瑞希の小さく華奢な手を、少しだけ強く握った。
「なあ、瑞希…」
「はい?」
瑞希が自分を向き、見上げているのが分かったが、達也は前を見たまま話を続けた。
「本当に美味かったのか?」
「はい、美味しかったです」
「じゃあ、食べてる時、嬉しかったか?」
「はい、嬉しかったです」
「本当に?」
「本当ですよ。どうしたんですか?」
「瑞希…」
達也は不意に立ち止まり、真剣な目で瑞希を見た。
「だったら、なぜ…」
“笑わないんだ?”と続く言葉を、達也は飲み込んだ。