「え? おまえ、あそこに入った事ないの?」

「はい…」

瑞希はそのイタリア料理店どころか、外食自体をほとんどした事がなかった。

クラスメートの会話に時々出て来る名前のそのイタリア料理店に、いつか自分も行ってみたいと瑞希は思っていたのだ。


「へえー、じゃあそこにしよう」

達也がスッと手を差し出すと、瑞希は自然にその手を取り、二人は手を繋いで店に向かって歩いて行った。はぐれる心配など、もうないというのに…