「買うって、何を?」

「おまえの服だよ」

「あ、でも、私、あまりお金持ってないから…」

か細い声でそう言うと、瑞希は悲しそうな顔で俯いた。

「俺が買ってあげるよ。つまり、プレゼント?」

事もなげに言う達也に、瑞希は驚いて顔を上げた。

「どうしてですか?」

「どうしてって、買いたいからかな…」

瑞希に可愛い服を着せたら、もっと可愛くなるんじゃないか?
そんな瑞希を見てみたい、という気持ちがあったが、照れ臭くてそれは言えなかった。


達也の殆ど答えになっていない答えに、瑞希が呆然としていると、「さあ、行こうぜ?」と、達也に腕を引かれた。

「あ、でも、悪いですから…」

「いいから、気にすんなって」

「でも…」

「“でも”はなし! 上に引っ掛ける物、持って来るから、ちょっと待って、な?」

そう言って達也は、軽い足取りでリビングを出て行った。