車は駅から歩いて5分程の場所に建つ、高層マンションの前で停まった。

車から降りると、春田はマンションを見上げて溜息をついた。

「ハアー、立派なマンション…。こんな所に一人住まいだなんて、随分贅沢な高校生よね?」

「はあ、すみません…」

その会話を聞いた瑞希は、目を丸くして達也とマンションを交互に見比べた。


「明日か明後日、中山さんの制服を届けに来るから、何号室か教えてくれる?」

「はい、555号室です」

「まあ。覚えやすいわね? あ、そうそう。来る前に連絡するから、携帯の番号も教えてくれる?」

「いいですよ。ゼロキュー…」

「赤外線でちょーだい?」

「え? あ、はい…」


達也はズボンのポケットから黒い携帯を取り出し、春田が構える真っ赤な携帯に赤外線を送った。