午後の授業が始まる少し前、達也は席に座って教室の入口を注意深く見つめていた。

すると一人の小柄で黒髪の少女が、俯き気味に教室に入って来るのを見た。見覚えのある参考書や辞書を胸に抱えながら。


(あいつ、やっぱりこのクラスだったんだなあ)

後ろから圭介に肩を突かれ、振り向くと圭介がその少女を無言で指差すので、達也は頷いて少女に視線を戻した。


少女は一番窓際の列まで行き、やや前の席に座った。達也の席からは2列左の一つ前の席にあたる。


(あいつの席はあそこか……)


少女の横顔が見えるかと思ったが、俯いた少女の髪の毛が邪魔をして見えなかった。

廊下でぶつかった時にチラッと見たのだが、酷く怯えた感じの目の印象が強すぎて、達也は少女の顔をちゃんと見ていなかった。

圭介が言ったように、本当に人形のように可愛い顔をしているのか、それを確かめてみたいと達也は思った。