「ひどいことになったわね。もう…埃が髪まで…。美月ちゃん怪我はない?」

部屋の角から琴音がゆっくり歩いてきて巻き髪を伸ばすように引っ張っている。

「うん、多分大丈夫。首筋の火傷が少し痛いかな。」

美月は立ち上がってポンポンと細いデニムを叩いた。

「ね。おかげで少し髪も焦げくさいし。突然のスタンガンなんて最悪よね。」

「まさか制服警官にスタンガンで襲われるなんて想定外だったね。
で、あれは?」

美月は青白い光の着地点の人影を目線だけで指した。

「死体だったわ。猪狩の。死因はわからないけど。」

首筋の火傷を両手で探りながら琴音は美月の隣で足を止めた。

そう。と言いながら美月はデニムとダウンをカサカサと探る。

「ケータイどころか財布も何もないね。」

「あの人達が私達の体を隅々まで触ったと思うとさらに最悪な気分になるわ。
とりあえず見える位置にカメラも盗聴器もないみたい。死体は探ってないけど…。」

扉は?と美月が聞くと琴音が顔を左右に振っると、巻き髪が振り子のように揺れた。