「なんだろ。私リリのこと尊敬してるよ。きっとみんなもそう思ってる。
それに普通と違うのは5人全員に言えることだし。
ね、琴音のこの匂いって何??」
「え、匂い??」
美月は黙って左手だけ運転席に伸ばしてベージュのコートを引き上げ、そしてパサッともとの位置に落とした。
1秒2秒とあけてさっきと同じ柔らかい匂いが舞い上がる。
「ああ、え、たぶん柔軟剤かな?」
「あ、それもしかしてリリが作ってるの??」
「そうそう、洗剤もそうなの。リリが今そっちに凝ってて、うち今ね洗剤だらけなのよ。」
「わあ。ほしいな柔軟剤。メールしてみよ。」
美月はケータイをダウンジャケットから取り出してメールを打ち始めた。
「え、私は美月ちゃんのシャンプー知りたいんだけどな。」
「ん、シャンプー?マツキヨで店頭にあるセットのやつだからわかんない。毎回変わる。
コンデイショナーとシャンプーで598円以下なら買う。
買えなかったら石鹸だよ。」
━ピルルル
メールを打っているケータイが鳴った。