「ごめん。」

萌乃の謝罪と同時に、カランと扉が開き育ちのよさそうな男女が入店してきた。

「はい、お待たせしました。」

パンケーキとタルトが運ばれてきてそれぞれの目の前に並んだ。

「ふふ、今日は三人だけなんだね。
あ、その三つ編み可愛い!」

ウェイトレス兼オーナーの里果はまだ20代の後半で、マスター兼アルバイトの秀行は40歳だ。
二人が結婚をしたのは里果がまだ20歳の頃で、里果がアクセサリーのプライベートブランドで成功を納めた頃だった。
その頃の秀行はIT関連のベンチャー企業に勤めていて、肩書きもなければボーナスもなく、週末にビール一杯300円の立ち飲みに行くことだけが娯楽だった。
外見でもスマートな里果に対して子熊のような秀行。

この美女と野獣が出会ったのが、里果が買い上げる前のこのカフェだった。

「ほんと!?美月にアニメキャラみたいとか馬鹿にされたんだから!」

「あら、それだけで馬鹿にしたとは限らないんじゃない?」

「え、里果さんには美月がいい意味でそんなこと言うタイプに見えてるわけ?」

「うん、いや、全く見えない、絶対馬鹿にしたよね。」