「傭兵?」

ゴツッとワイルドターキーの瓶をコンクリートの床に置き、神野は出口へ歩いた。

「あれ、便所すか?めずらしい」

「俺だって生身の人間だ。頭を撃たれれば死ぬし、酒を飲めば小便も出る。」



━━三日前

「この仕事でお前の趣味が一応終わるわけだな」

神野と同じく浅黒く細面の男がコーヒーにミルクを入れながら言った。

「人殺しが趣味か。まあ、確かに沢山殺したな。お前もそうだろう?」

「俺の場合は職務であり責務だ。
お前みたいに退役してから趣味で人殺しはしていない。」

男はティースプーンで神野を指差しながら言った。

「それで、どうだそのネタ」

「ああ。最高のネタだ。『ヘブンズカラー』。やっと辿り着ける。
…しかし加藤。お前、いつから俺の存在を?いや、まずこの国にいつ?」

「忘れたな。お前と同じくらいの頃かもな」

「ふっ。まあいいか。お前が俺と同じものに興味を持っていたとは意外だ。
この国に来たのもそれか?」