「美月ほんとかっぱ橋好きだよね!」

「このシャンデリアだって、かっぱで買ってきたやつでしょ?
コンクリートにシャンデリアってセンスがわからない。」

萌乃とリリに挟まれた美月が珍しく困った表情をしている。

「ま、いいや。アールグレイ頂戴。
それでさ、その話だと依頼主はどこからともなくうちらにたどり着いたわけじゃなくて、
立花が依頼主をそそのかしてうちらに繋げたんだね?」

「うん、そうゆうことだね。それで白々しく片桐に連絡した。はいアールグレイ。」
美月がリリと萌乃の前に湯気のたつティーカップゆっくりと置いた。

「ありがと。公安ていうのもメンドーな組織だね。
それにしても依頼主の奥さんも今頃自殺したの?
それとも何年も前に自殺して、犯人をずーと依頼主が探して今なの?」

「自殺したのは半年前だよね。正確には心中。
ん!アツッ!」

萌乃がアールグレイをすすりながらリリに言った。

「え、もしかして、それ…」

「うん、レイプで出来た子供と一緒に。車で練炭。」

リリの目から光が消えた。
濃いスモークガラスのような、全ての反射を拒否したような、
冷酷でありながらとても悲しい目だ。

「おかわりはセルフサービスね」

美月が誰にでもなく言った。