「馬鹿も才能ですかね。俺人当たり良すぎて接客業の方がよっぽど向いてるんすよ本当は」

カズヤはシリンダーをひとつずつ丁寧に、丁寧に、外科医が手術をしているかのように、細長い棒で慎重な動きで吹き上げる。研磨すらしたのかと思う輝きだ。


「ああ、オマエなら向くよ接客。間違いない。手の形も綺麗だしな。」

「やめてくださいよアハハ。口説いてんすか?あれ、神野さん男も好きなんですっけ?俺出来るっすよ?高いけど。」


ガシャ!!

神野は持っていた空のブラックニッカの瓶をカズヤになげた。
瓶はカズヤの後方のコンクリートの壁で粉々に弾けた。


「ちょ!この距離でオーバースローは悪意すぎでしょう!死にますよこれ」

放射状に広がったガラス片をカズヤが足で一ヶ所に集めている。


「ああ、俺達みたいのは死ぬべきだろ?
生きる必要がない俺達が、生きる理由を無理矢理言い訳して生きているなんて滑稽だと思わないか?」

「だとしてもウイスキーボトル直撃死は避けたいっすね。」

カズヤはテーブルのバーボンのボトルを持ち上げて四方八方から覗き込んだ。