「私は何もしてないわよ。」

と、美月。


「可那ちゃんリリの機嫌取ってばっかだもんね!中間管理職みたい。」

と、萌乃。


「はあ…。」

と、可那。


「とりあえずさ、コート直ったんだし、打ち合わせ行けば?琴音待ってるよ?」


可那の顔はまるでヒタイで電球がピカッと光ったような、
そんな閃きの明るさで、

「!! そうね!!あたし仕事だった!ナイス美月!じゃ、行ってきます!あとよろしく!」

と、ピューと漫画アニメのように可那は、玄関も閉めずに出ていった。


「ああ…行っちゃった」

可那の後ろ姿を見送った萌乃が、目の前でチョコレートを取り上げられた子供のような顔で言った。


「そうだね。」

萌乃と美月はクスクスと向かい合って笑った。


「おい、なんだゴキブリでも出たか?可那が凄い形相で階段駆け降りていったぞ?」


玄関には男が立っていた。


「あ!キリちゃんおはよー!」

「あ、ああ、おはよう。キリちゃんはやめようか萌乃。」

「片桐って何か固いんだもん。」

「どしたの?仕事?」

美月は冷静に男に聞いた。



「ああ。婦女暴行だ。」