「極端にアルカリの値が高くてあと何か秘密のものが入ってるんだって。
成分はH2Oでしかないみたいで、
環境問題にもとても優しい道具ね。
でも売れないの。」
「なんでよ。こんなもん200mlくらいで980円あたりで売ったらパカパカ売れるわよ。原価いくらなの?」
「可那ちゃんガメつい…」
「うん、アイルランドの国家機密みたい。」
「アイル…なにあの子また侵入してるわけ?そんなに好きなら帰ればいいじゃない。気味悪いのよ。」
桜子がおもむろに立ち上がり本棚から村上龍の最新作を取り出した。
「え?なによこれ?字だけの本なんか読まないわよ。」
「聖書思い出しちゃうもんね!」
萌乃がニコニコと可那に向けて言ったが、可那は真剣な眼差しで、
「萌ちゃん、冗談になってないわよ。」
と、目で萌乃を制した。
一瞬、可那の目は割れたガラスのような鋭利な空気を纏った。が、
「いいから持ってみて。」
美月がその村上龍の最新作を可那の胸元に押し付けた。