磁波エレキの部屋。



「あ、そうだ。エレキ。」

「何?」

「はい、手袋のスペア。」



エレキが常にしている黒い手袋を渡す。

磁波カンジにしか、作れないモノである。



「ありがと。」

「学校で何が起こるか分からないし、準備は万端にな。」

(兄貴は意外に心配性なのか…?)



学校は危険な場所だ。
磁波カンジは、そう思っている。

彼の学生の時は好戦的な奴等が多く、帰る度に生傷を増やしていた。


(可愛い弟が傷つけられるのが嫌だ。)

面と向かっては言えない。
引かれるからだ。



「どうしたんだ?」

「大丈夫だ、問題ない。」

「は?」



すると、カンジの携帯電話の着信音が鳴る。

サブディスプレイで誰から電話かを確認する。

『時田破流』。

そして、ベランダに出る。



「お?どうした?」

『カンジ、過保護にならないようにね。どんなにエレキの事が大切でもさ。』

「あ…ああ、分かってる。」

『さておいて、別件だよ。』



エレキは何を話しているのか気になったが、訊くことはしなかった。