拳とは違い、つま先の方はみぞおちにはいったのか、男はその場にうずくまる。

「譲ちゃん、大丈夫か?」

その間に青年は動けない少女に手を差し出し、観客と化した人々の視線から逃れようとした。

のだが、

「あーさーぎーりぃー?」

群衆の中から響く太い声に、それまで常に余裕を見せていた青年の顔が青くなる。

悪戯が親にばれた子供のような表情を浮かべた彼の顔を少女は見た。