イギリス。

沖田 真生という少女の墓の前に、花束が供えられている。

まだ瑞々しい花束。

その花束の横には、一振りの軍刀が鞘に納められて置いてある。

よく使い込まれ、鞘も柄も傷だらけ。

まだ血の香りすらしそうなほどの軍刀。

この持ち主は、二刀の使い手だった。

一振りは、生死を共にした戦友からの借り物の『護り刀』だった為、よく磨き込んだ後で返却した。

だから持ち主には、この墓前の軍刀は最後の一刀なのだが…。

(俺にはもう必要ない…)

墓地から遠ざかる背中が、そう呟いているようだった。

(それに…)

かつての刺々しさが、その背中からは感じられなくなっていた。

(その刀があれば、いつも俺と一緒のようで寂しくないだろう?真生…)