馬鹿な…。

そんな馬鹿な!

ヨロヨロと歩み寄るアレクセイ分隊の面々。

妃の腕の中、グローレンの呼吸は止まりかけていた。

臓器移植実験被験者のルシファーでさえ、グランドマザーの一撃は相当なダメージを蒙る。

只の完全抗体保有者でしかない、しかも老いたグローレンに、グランドマザーの攻撃は一撃とはいえ強烈過ぎたのだ。

「妃さん、何とか、何とか…!」

シオンが妃に縋りつくものの、既に手の施しようはなかった。

「…頼みがある…」

今にも閉じてしまいそうな眼を必死で見開き、グローレンが言う。

「私の身は…この場に置いていってくれ…」

それは足手纏いになる事を恐れるあまりの言葉ではなかった。

「せめて…死ぬ時は…死んでいった戦友達と同じように…戦場で…」

言葉は最後まで続かない。

いまわの際まで、死んでいった同胞を想いながら。

グローレンは『指揮官』ではなく『一兵士』として逝った…。