スラリと軍刀を抜くグローレン。

その動きには隙が見当たらない。

アレクセイ分隊の面々が、若武者であり剣豪と位置づけるならば、グローレンは差し詰め熟達した武将であり剣聖といったところか。

数々の戦いを経て培ってきた経験が生み出す気迫。

その気迫は、体躯と力で勝るグランドマザーにも何か感じさせるものがあるのだろうか。

彼女から見れば小さな一介の人間に過ぎないグローレンを見て、グランドマザーの動きが止まる。

両者睨み合い。

「妃少尉」

視線をグランドマザーから逸らす事なく、グローレンが言う。

「アレクセイ分隊長達を安全な場所に移動させろ」

「し、しかしグランドマザーは…?」

あの怪物を一人で押さえられるものか。

それは対峙した妃達が一番よくわかっている。

それでも。

「言った筈だ」

グローレンの足が、ジリ…と動く。

「ここから先は私が引き受ける」