「待ちたまえ」

落ち着いた、しかし全てを制するような声に、時雨分隊の隊員達は動きを止めた。

「諸君らは地上の一般兵士の援護に向かいたまえ。AOK群に苦戦を強いられている」

そう呟いた男の顔を見て、時雨分隊全員が驚愕の表情を浮かべる。

「あ…貴方は…!」

「何であんたがこんなとこに!地上の指揮は誰が執ってんだ?」

晴と皓が口々に言う。

「地上部隊は時雨少佐に任せているが…一般兵士だけでは限界があろう…アレクセイ分隊は私が引き受ける」

「し…しかし…」

ラルフの表情に動揺が窺える。

アレクセイ分隊は、現在グランドマザーとの戦闘の真っ只中の筈だ。

そんな危険な場所に、『この方』を送っていいものか…。

「案ずるな」

その男は薄く笑って、手にした10式近接戦闘用軍刀を掲げた。

「私とて完全抗体保有者だ」