「許されないわよね、この程度じゃ」

妃は俯いた。

「これは只の発作を止める薬…ルシファー少佐の肉体そのものが、人間に戻る訳じゃないわ…」

妃の口から出たのは、尚も罪の意識に苛まれた言葉だった。

彼女を殺そうとしたルシファーに対する恨みは、いつまで経っても出てこない。

「待てっ…待ちなよっ…」

ルシファーが妃の腕を掴む。

「お前…それはおかしいだろっ!」

「そうよね…この程度で許してもらおうなんて…」

「そうじゃなくてっ!」

苛立った。

この女は何て物分かりが悪いんだ!

よくそんなので研究者が務まるな!

「僕はお前を殺そうとしたんだぞ!何故そんな奴を助けようとする?」

ルシファーの表情は、苦しげでさえあった。

彼は他人との意思の疎通に、『憎悪』以外の感情がある事など知らなかった。