ルシファーの顔から笑みが消える。

代わりに浮かんだのは…怒りだろうか、失望だろうか。

何に、誰に対しての怒り、失望なのか。

己と同じ側だと思っていた蒼真が情に絆された事に対してか。

それとも蒼真の言葉に揺り動かされた、己の『人間として生きたい』という未練に対してか。

周囲の人間にも、ルシファー本人にも、その真意は窺い知れない。

ただ。

「グランドマザーねぇ…」

明らかにルシファーは、AOKの首魁に対して興味を示したようだった。

己の身の内に移植された忌まわしき臓物。

その臓物によって限りなくAOKに近しい者となったルシファーにとって、グランドマザーを討つという行為は『親殺し』にも似た禁忌の感覚を覚えさせる。

そしてその禁忌という感覚に、彼は甘美とも言える魅力を感じていた。