にもかかわらず。

「簡単な事さ」

そんな心の揺れを僅かばかりも表に出す事なく、ルシファーは不敵に笑う。

「僕は僕を殺してくれそうな相手を探しに来たのさ。そしたら、お前達がマザーとかいう楽しそうな獲物と遊んでるじゃないか。奴なら僕を殺してくれるかと思ったんだけど…」

ルシファーは足元に転がっているマザーの頭部を踏みつける。

「がっかりだ」

「そうか…」

流石にルシファーの屈折した性根は筋金入りだ。

蒼真が少しくらい揺さぶりをかけた所では、簡単に本音を吐露してはくれない。

「ならば…貴様を殺してくれそうな相手の所に案内してやる」

蒼真はルシファーを見据えた。

「グランドマザー…あの馬鹿でかい奴なら、貴様のような性根の腐った化け物でも殺してもらえるかもしれん」

「ち、ちょっと…沖田少尉」

あまりの毒舌な物言いに、妃が制止に入る。

が、それも無視して蒼真は続けた。

「グランドマザーと貴様が化け物同士で一戦交えて、お望み通り貴様がくたばればそれで良し…しかし…」

蒼真の瞳に他意のない純真な輝きが宿る。

「万が一、グランドマザーを倒してこの戦争を終結させる事ができたら…貴様ももう一度『人間』として生きてみないか、ルシファー少佐…」