蒼真は見抜いていた。

表面的には見えない、ルシファーの微かな『心の揺れ』を。

彼は迷い始めているのだ。

人間の本性が丸裸にされる戦場という特殊な場所。

綺麗事も、お題目も、この場では全て引き剥がされてしまう。

どんなに平時は取り繕って平等を口にする者も、極限の状況下に置かれれば他人を押し退けて我先にと逃げ出し、生き延びようとする。

そんな戦場にあって、この場にいた者達は自己犠牲の精神を発揮し、アレクセイ分隊を命と引き替えに先に進ませようとしていた。

アレクセイ分隊もまた、彼らを見捨てられずに先に進む事を躊躇した。

ルシファー言う所の『利己的な生き物』がである。

それらの行動を目の当たりにして、ルシファーに迷いが生じたのではないか。

蒼真はそう睨んでいた。