「早く!」

顔半分を紅に染めて、サーシャが叫ぶ。

「突入してください!」

骨折したのか、右足を引き摺りながらジェシカが叫ぶ。

「貴方達には人類の未来がかかっているんですよ!」

既に体力の限界なのか、マーガレットの声は掠れている。

そんな仲間達を捨てて、この場を離れられるものか!

誰一人として動けないアレクセイ分隊。

彼らは兵士としてプロフェッショナルだ。

戦闘能力も知識も、一般兵士より遥かに高いものを有している。

一騎当千の有能な戦士達。

だが致命的と言えば致命的。

彼らには、『任務を優先して仲間を切り捨てる』という非情さが欠落していた。

一匹狼を気取る蒼真でさえ、真に選択を迫られれば今この場のように躊躇してしまう。

仲間の信頼と絆を知ってしまった今なら尚更だ。

それは、兵士として、大局を見て動かなければならない軍人としてはあるまじき事なのかもしれない。

しかし…その不完全な兵士達の姿を見て、感銘を受けた者がいた。