「お前…!」

驚いたように妃を見つめる蒼真。

「恩を売りにきた訳じゃないのよ、気にしないで」

少し困ったような顔をして妃が笑う。

こんな事をしても、蒼真は嫌がるに決まっている。

だから誉めてもらおうと思って助けた訳ではない。

何より妃の実力では足手纏いになってしまうに決まっているのに。

なのに。

「何ていうか、こう…体が勝手に動いちゃった感じ?」

何とかその場を取り繕おうとする妃を。

「!」

蒼真はグイッと引き寄せ、自分と背中合わせの格好にした。

「離れるなよ、妃少尉。お前は自分の身を守る事だけに専念しろ」

「……了解」

拒絶されなかった。

それだけでも、妃には十分助けに来た甲斐があったと感じられた。